| 盆栽 / Tips（渡辺74年式） |
 盆栽にはTipsなど存在しない。植物は生き物であり、それは日々刻々と変わって行くものである。 日々まったく変わりのないように見える植物への鋭い観察行為と、同時に自分の経験に基づいた知識によって植物を自分の理想へと変化させていくことを極め体系づけること、それが盆栽の道であるがためだ。 しかし、自然界でもそうであるように植物もまた人間の思い通りには動くことはない。盆栽という鉢の中の世界だけにおいても、植物は人間に抗うのである。 人間の作り出した道具「飛行機」が風を征服し、空にまでその行動領域を広げた時代のとき。「星の王子さま」を書いたサン・テクジュペリ(1900〜1944)がその飛行機乗り時代に伝記として記した著書「人間の土地」の一説にこうある。「大地は僕ら人間について、万巻の書よりも多くのものを教えてくれる。それは大地が人間に抵抗するがためだ。」と。同時に、自然崇拝をするわけではなく、人間のテクノロジーを否定する意味ではないということもフォローする。「人間がそういう困難に立ち向かうためには道具が必要だ」と。いかにも職人らしい言葉ではないか。征服しようとする敵（相手）、自然の強大さを認めて尊敬しつつも、テクノロジーの進化を培っていくことが、人間の大地より与えられた使命であるというのだ。まことに厳しい着眼点であり、指摘であるように思う。 植物はものを言わない。ただそこの在るのみがすべてだ。それに美を見出す人間とはなんなのか。 盆栽の道は続く・・。 |
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